[本文はここから]

ユーカリが丘ニュータウンを見る-2

2017.01.05

■まちのランドスケープ
まず井野中学校を覗いてみるとその敷地の広さにビックリ。運動場は都内の中学校の優に二倍はありそうで、隣接する道路とフェンスの間に2m程の緑地帯があり、よく見ると自然の側溝にもなっている。緑地帯に植えた常緑高木は運動場の樹林と違い、枝を良く張り葉も多くつけている。防音の効果は少ないだろうが、防砂・防風の機能は抜群である。運動場の端部に野球のバックネットがあったが、ここから人が覗き込んだ形跡があるのは微笑ましい風景のひとつであった。

住宅エリアのランドスケープは何処にでも見られる一般的な仕様だが住民の生活が風景と共に育っているようで、丁寧に手入れされた木々は落ち着いている。住戸の敷地面積が市街地エリアより広く植栽地も取れるので建物とのバランスが良い。又、敷地が広く風格のある家には日本庭園の技術を使った石積、竹垣、刈り込みが見られ、目を楽しませてくれる。

交差点では緑地を多めにとり樹林をランドマークにした所や、緑を多めに植栽し車に対する緩衝帯にした住宅地もあり、共に修景にも心掛けた気遣いが見える。

■ユーカリが丘北公園を見る
次にニュータウンで一番大きい北公園に立ち寄る。とてもシンプルな骨格の公園で、大きな方形の芝生広場と舗装された多目的広場により構成。見通しの良い公園だが、驚いた事に天気の良い土曜の午後だというのに、ひとりも利用者がいない。なぜ利用されないのだろうと考え込んでしまった。ここは戸建て住宅地なので庭など外部空間が多く、わざわざ公園に来る事も無いと考える人が多いのか。子供がいないのは、前に述べた「人工の年齢配分を考えながら長年掛けて販売」のコンセプトが実現出来なかったのか、どうなんだろう。

私はこの公園そのものに魅力が無いからだと考えた。まず芝生広場は、かなり勾配が付いておりサッカー等の運動をするには不便であろうし広すぎてメリハリが無い。私だったらフラットな芝生面にして残土を使い周囲にアンジュレ-ションを付け、休息などのヒューマンスペースを設けるであろう。又、多目的広場もここまで広いと大きなイベントでしか使えないだろうが、センターエリアからかなり離れたこの公園での開催は難しい。

公園を多目的広場、芝生広場、遊戯広場と機能を分化整理してゾーニングし、そのまま空間を作るとこの様な状態になるのだろう。利用者を公園に誘導し、その中での「楽しみプログラム」をデザインしなければならいと考えるが、この公園はとても無機的な作りに思えた。よく考えてみれば、日本のほとんどの公園はこんな状態で、公園関係者が新しい発想でもう一度公園のあり方を考えるべきであろう。思考停止が続いてはいけないのである。

■エピローグ
ランドスケープデザインとして優れた住宅及び周辺の設えの発見があるかと歩いたが、結果としては実感できる空間はなかった。道路もゆったりと作られ、住宅の敷地も広く大きな空の下、気持ちの良い空間ではあったが、これという目を引くものは少なかった。ニュータウンの「コンセプト」や「住まい方のしくみ」等が語られ、民間で開発した既存のニュータウンの中では出色の「ユーカリが丘」であるが、今回初めての訪問で一番強く感じたのは、中心にある里山の集落のランドスケープのパワーであった。里山では長い時間をかけてランドスケープを成熟させ、働く事と住まう事が一体となった空間は力強くて美しい。

それに対して新しく作られたニュータウンでは住まう事を中心として成熟したランドスケープが今後どの様に変化して行くのであろうか。私は公共施設と準公共施設のあり方、使い方がニュータウンの成熟のヒントになるのではないかと思った。それは最後に訪れたコミュニティーセンターの賑わいと、そこに接する南公園の子ども達の歓声がこのまちの未来を象徴している様だった。しかしもう一度行かなくては全貌がまだ掴めない奥深い「ユーカリが丘」でもあった。

戸田芳樹

[ここからはカテゴリ内ナビゲーション]

NEWS

  • 株式会社 戸田芳樹風景計画
  • 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-36-1ミユキビル3F  Telephone:03-3320-8601 / Facsimile:03-3320-8610
  • COPYRIGHT © Yoshiki Toda Landscape & Architect Co.,Ltd. All Rights Reserved.