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白洲次郎、正子が暮らした武相荘を訪ねた

2020.03.20

兼ねてからの念願であった白洲夫妻の住まわれていた武相荘を訪ねた。武相荘とは正に無愛想な名前だが、武蔵と相模の堺にあるのでこの地に因んだと聞き、人柄が彷彿させられるネーミングだと感じた。

以前、その奧にある鶴川真光寺公園の設計を担当しており、時々武相荘の前を通っておりいつか訪ねたいと思っていた。白洲正子さんが亡くなり2001年にミュージアムとして開館したが中々行く機会がなく今回思い切って訪ねてみた。

小田急線鶴川駅からゆっくり歩いて15分程の結構交通量が多い道を進むと、ユニクロの店舗の奥にその建物はあった。ここの景観は以前通った時とは様変わりしており、ラーメン屋等が進出した為にうっそうとした雑木林はすっかり消滅していた。その上、ユニクロが強引に店舗と駐車場を作ったので身も蓋もない景観になっており、白洲夫妻がこれを見たら卒倒するのではと思うほどの様変わり様だ。

ここは目をつむって通過し武相荘へ。入館料金1,100円支払うとそこは別世界が広がっていた。入口部は受付とオープンカフェで出迎えて空間を作り、その奧に中門がさり気なく見えて来る。この中門が絶妙なプロポーションをしており、大木と母屋を極上に見せてくれる。母屋はミュージアムとなっているが、先に庭園と雑木林を歩く事とした。ミュージアムは農家を改装しているだけに外部空間は何気ない作りで、今では失われつつある里地の風景が残っている。雑木林の中に短い散策路が丁度西日が足元を照らしているのが良い気分で、ぐるりと一周した。所々にある竹林が陰影の変化を付けて緩やかに続き、石造物がポイントに置かれており、静かだがリズム感があるのが好ましい。

今まで様々な庭園を見てきたが、これだけ作意のない空間との出会いは珍しい。しかし、この風景を自分の心で切り取れば、自分にしか出会えない瞬間の時を感じられる素朴な深さがあった。ミュージアムの展示は華美なものはなく、実直な生活空間がここで営まれていた事が良く分かった。しかし所々にキラリと光るセンスも感じられ、夫妻の人柄が良く表現された展示内容でもあった。

帰りは駐車場に向かって進む道を選んだが、正面入口のアプローチに比べ、遥に気持ちの良い空間であった。少し湿地気味の所はウッドデッキが敷かれ、初春の花も美しく心地良く武相荘を後にした。

戸田 芳樹

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