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浜松城日本庭園を見る-3

2020.03.05

■日本庭園からの流れと池
上池から下池まで下ったがこの日本庭園にはまだおまけがあった。下池の下流に流れの石組らしきものを発見。それを伝いながら追ってみると、次々と庭園風景が現れてきた。流れは循環式ではないので水量は不足しているが、伊藤独特の自由な石組が施され、そのバリエーションが目を楽しませてくれる。

程なく歩くと比較的大きな水面が現れ、シンプルで大振りな木橋が見えて来た。庭園内は半橋であったが、最後の池部は一般的なスタイルの木橋でこれはこれで美しい。池の周囲を歩けば、素朴なデザインが展開しており、平安時代に作られた毛越寺庭園のなぎさを思い出してしまった。石を多く使った豪華さはないが、最小限の石を適所に扱った枯れた味わいは遺跡庭園の風情も醸し出し、遠い過去に連れ去られるようだった。日本庭園の下部の公園に流れを作ったのはどの様な経緯であったか分からないが、連続してみる価値はある。現在では歩行動線に無理があり、スムースに体験出来ないのが残念で、もう少し活用すべき価値のある空間である。

■心をつくしたディテール
伊藤邦衛のディテールには細やかな心遣いがある。オーソドックスな納まりはきっちりとやり、所々思い切ったデフォルメを試みている。私達もこの様な勇気を持ちたいものだ。

北門からの導入デザインは空間を少しずつずらして中まで見せない工夫が見られる。また舗装を階段の先まで延ばし、視線の止めは低い石積を扱っており、まるで広場のようだ。階段は直角に2度曲がって視点に変化を持たせ、水辺の広場は水路をつなぐ橋が効果的だ。さらに船着場で視点を低くし、水門オブジェと共に「水の物語」の風景を作っている。

下池の形態は柔らかい曲線を微妙に扱いわざとらしさは皆無。園路から少し引いた所に設けた石積は低い曲線を描き、威圧感はなく美しい。滑滝の周辺は石組が特に豪華に作られ眺めが充実している。木橋から滑滝を観賞するのも良いが、滑滝近くの石橋を通るとさらに迫力を増す楽しさがある。

最上部の大滝は垂直性を表現したダイナミックなデザインで、足元に横長の大石を置いて安定感を出している。四阿前の切石階段は水平性を強調し、滝の垂直性を際立たせた。庭園の最上部に天に届くような大滝には、庭園観賞の楽しさが満ちている。伊藤流庭園術が堪能できた。浜松城日本庭園には是非行ってみることをお勧めしたい。

■エピローグ
浜松城日本庭園の素晴らしさは書き尽くしたが、問題のひとつは公園の中に庭園が入っていることである。庭園には自由に入れるので子供連れや老人達など、多くの人々が利用しており素晴らしい環境である。しかし、どのルートで廻れば作庭者が語る庭園の物語が感じられるか分かりにくい状況といえる。適当にどこからでも入れば良い、と言う人には日本庭園を語ってもらいたくない。庭園の南側、天守閣の近くに少し大きな入口があるが、ここからは庭園の中間点となり、どちらに行っても中途半端になる。この入口周りの設えが雑然としているのは、伊藤が主たる入口ではないと判断したからか。庭園は通り抜ける為にあるのではなく、作者の作り出した空間に沿って歩かなくては庭園の意味がない。浜松城日本庭園も物語に沿って見てもらえるようサインや解説書を是非示していただきたいものである。

戸田 芳樹

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