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あさか冬のあかりテラス

2020.12.04

■新たな冬の風物詩づくり
当社が設計現場監理を担当した埼玉県朝霞市のイルミネーション「あさか冬のあかりテラス」が2020年12月4日から2021年2月14日まで開催されます。

この計画の主な対象地は、東武東上線朝霞駅前と「シンボルロード」と呼ばれる緑溢れる道です。「シンボルロード」は、かつて米軍基地CAMP DRAKE(キャンプ朝霞)として使用されていた跡地(約16.5ha)の一部を緑の都市軸として整備した幅員30m×延長約680mの空間で2020年2月に供用開始しました。

イルミネーション事業の主催は朝霞市ですが、6つの団体が共催として関わっています。昨年までシンボルロード周辺で個別にイルミネーションを行っていた団体や、新型コロナウイルス感染症の影響により中止となった夏の市民祭り「彩夏祭」(よさこいと花火)の実行委員会も加わり、新たな「冬の風物詩」をつくろうと官民連携の複数の主体の協働によるプロジェクトとして計画されました。

■基地跡地の森の崇高性
朝霞市は埼玉県南部に位置しており、市は武蔵野の面影を残す自然環境と利便性が調和した街の魅力を「むさしのフロントあさか」というタグラインを用いてプロモーションを行なっています。

そのような自然に恵まれた朝霞市の中で最も特徴的なのがシンボルロードを含む「基地跡地」です。「あさか冬のあかりテラス」はイルミネーションを見るだけのイベントではなく、LED電球の煌めきの背後に広がる深く豊かな自然環境に眼を向けることを目的としています。

一見、単なる雑木林に見えますが、様々な出来事や時間の積み重なりによりつくられた類を見ない価値ある森です。木々は場所を問わず自然の摂理に従い、あるがままの生の営みを続けます。米軍基地返還後、人の手が入らない30年以上の歳月が木々を育て、数多くの大径木が残されました。まさに都市において生物多様性を育む緑の拠点に相応しい空間です。

■自然に寄り添う灯りの演出
訪れる人々や自然が輝き、主役となる灯りの演出をテーマにしました。

森の夜は漆黒の暗闇となってイルミネーションの灯りを引き立てます。古代の人が星の連なりに意味を見出だし、星座にまつわる伝説や神話を創造したように、灯りが言葉なき森の語り部となります。ここを訪れた人が木々の声に耳をすましながら先へ先へと導かれるような会場構成を心掛けました。

今回配置したイルミネーションは、モミジバスズカケノキのランタン、竹花火、竹灯籠、大イチョウのデコレーション、大径木ライトアップなどです。

大径木に取り付けたボール状のランタンはスズカケノキの丸い実をモチーフにしたもので、PEFC認証(国際森林認証制度)を受けた森林の木材とリサイクル可能な樹脂を合成して作られています。ひとつだけハート型のランタンを枝々の懐に抱かれるように設置し、スズカケノキの心を表現しました。

夏の夜空を彩る花火をモチーフとした竹のオブジェ「竹花火」と、彩夏祭の“よさこい”の躍動感をモチーフとして細く割った竹を編み込んで立ち上げたフォリー「竹灯籠」は、どちらも庭師(作庭志稲田株式会社、協力:関谷造園、諸星造園、増田造園、庭照苑、庭悦)が参加して意匠と技を用いてつくりました。使用した竹はイルミネーションが終わった後も廃棄せずに竹炭として再利用します。点灯式の約1カ月前から現場で紺色の半纏を着て作業する庭師たちの姿に、シンボルロードを散歩する方々も立ち止まり興味深そうに見入っていました。オブジェが完成するまでのプロセスはそのままパフォーマンスとなり、あかりが灯る前の景色もインスタレーションとして人々に楽しんでもらいました。伝統と革新を兼ね備えた庭師のセンスと技術力がなければ実現しなかったのではないかと実感した作品でした。

訪れる人々には竹灯籠の中に入って下から眺めてもらいたかったのですが、残念ながらコロナ禍で密を避けるため、立ち入り禁止にせざるを得ませんでした。しかし、次々に表情を変える色とりどりのライティングを前にソーシャルディスタンスを保ちながらも跳びはねて楽しげに過ごす子どもたちの姿に、閃光にも似た色鮮やかな輝きのような生命力を感じました。

人間と自然という二元論的な発想ではなく両者の根源的な連続性を理解し、脆さや儚さを合わせ持つ完全にはコントロールができない自然環境を活かした計画にしました。自然と共に生きるという希求を体現した人間の居場所をプレゼントするプロジェクトでもありました。

コロナ禍という重苦しい社会情勢の中、柔らかな木立の灯りに抱かれる日常とは違う時間と場所を体感することで、少しでも心を明るくできればと願っております。

新型コロナウイルス感染症対策を充分になさった上で、多くの方々にご来場いただければ幸いです。

仲津 佑哉 森川 健人

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