日本庭園
2026/4/9
琵琶湖の居初氏庭園を見学する-2
■見せる目的の「延段」
「延段」は歩く機能以上に琵琶湖への想いが強くあり、この直線のデザインは湖面の水平線を取り込んだ表現と考えた。琵琶湖の背後にある穏やかな山並みの佳景を人工的な「延段」の一直線により、自然と人工とのかかわり合いを強調。まさに「あ・うん」の手法ではなかろうか。さらに三上山や鑑山など、ランドマークとなる山景に視線誘導を図るなど、一石三鳥ともいえる贅沢な「延段」であると見た【写-6】。
「第3の延段」は一直線につくられているが長石は使わず、穏やかは表現である。建物の右手までつながった先には宝塔の塔身を利用した美しい手水鉢が置かれている【写-7】。
「第2の延段」の左手には自然石をたて使いした「立ち手水鉢」があり、添石までついているので、まるで石組のような構成。普通、自然石の手水鉢はどっしりした富士山型が多く、縦に石を使うのは珍しい【写-8】。野趣に富んだ自然石の手水鉢と、デザイン性の高い宝塔の手水鉢も「あ・うん」の関係を築いていると読むことができる。
■祝祭的な意味を持つ鶴亀石組
次に石組を見ていこう。この庭園は居初氏の「婚礼の祝い」としてつくられたもので、そのあかしに鶴亀石組を庭園の中心に設けている【写-9】。鶴亀の石組は石組そのものを観賞するだけでなく、両石の間を通した軸線上に崇拝の対象を置き、礼拝するためのデザインである。つまり、鶴亀の石組だけを観賞対象としてないが、江戸時代以降になると状況が変わり、鶴亀そのものが観賞の対象にもなった。
この庭園では建物から右手にある亀島の表現は分かり易いが、鶴島をどう見るか少々難しい。私は2つの解釈を考えた。
A案は「第2の延段」の左後方にある石組で、大きな立石が羽石に見えなくもなく、これを鶴石組とすれば琵琶湖に対しての祝福となり、この庭園のコンセプトにふさわしい【写-10】。しかし、鶴と亀が離れすぎており、コンセプトとしての表現が弱く感じられる。
もうひとつのB案は亀島の左、黒松の下に小さな石組がある。これを建物側から見るとボリューム感がなく貧弱だが、横から見ると意外と石の幅が広く立派。まるで、金地院庭園にある鶴石組の鶴首石を小さくした様に見えた【写-11】。この鶴亀石組の間からの軸を延ばせば、琵琶湖の先にある尖った山に向かっているのが分かる。
広く琵琶湖を対象としたA案か、ランドマークの山に向きあうB案か、色々と解釈がありそうだ。だからこそ庭園見学の楽しみは無限に広がるのだと私は楽しくなった。
居初氏庭園は茶道における特別な人達がかかわった作品で、「延段」や飛石の扱いが桂離宮を思わせるようなデザインが見られた【写-12】。沓脱石からの飛石まで、鮮やかで豪華な打ち方を民家でも実現させており、「富の力」と「文化」の力にふれることができた庭園であった【写-13】。

【写-6】「第3の延べ段」右手松の下に亀島、左手に鶴島らしき石組

【写-7】石造物宝塔を利用した美しい手水鉢

【写-8】自然石の立蹲踞は石組のように見える

【写-9】亀島の石組にシンボル樹の黒松

【写-10】鶴島にも見える羽石(A案)

【写-11】左の黒松の下の鶴首石らしき石(B案)

【写-12】変化に富んだ「延べ段」と飛石の配置は桂離宮を想い出す

【写-13】立派な家屋と日本庭園





