日本庭園
2025/6/10
尾道市の小林和作邸の庭園をつくる
私は広島県尾道市出身、大学で東京に出てくるまでの多感な期間を長く過ごした故郷である。郷土の恩人である小林和作(1888年~1974年)は山口市の生れで、京都市立絵画専門学校(現京都市立芸術大学)を卒業後上京、上原龍三郎らに洋画の指導を受けた。40歳を過ぎてから尾道市に移り住み、広島県の美術界の発展や後進の指導に力を注いだ人であった。残念ながら写生旅行中に転倒して亡くなったが、後に名誉市民となり市民からリスペクトされている人物である。
住んでいた屋敷は尾道市に寄贈されたが、市がもてあまして売却した。その住宅をNPO法人尾道空き家再生プロジェクト(代表豊田雅子)が引き受け、建築を見事に再生し、アーティストが長期滞在できるアトリエとして運
営を始めた。庭園は市民にも随時公開しているのでぜひ見ていただきたい。
この建物は石積された高い敷地にあり、隣にあった3軒が解体され、そこが空き地になっていた。私は代表の豊田さんと相談し、そのスペースを公園のように誰でも入れる庭園をつくろうと思った。つまり庭園のようなスケール感でありながらオープンなスペースとし、特に子ども達が集まる大歓迎の空間をつくり上げた。
庭園のテーマを「実りの庭園」としたのは今、子ども達はスーパーで果実は見ても実のなっている姿を見ることは少ない。そこで、いちぢく、みかん、うめ、びわ、かりん、などの「果物」と、こなら、くぬぎ、まてばしい、しらかし、などの「どんぐりの木」を植え、手にとって楽しめるよう計画した。そして中央部は広い芝生地とし、仲良く座って写生できる空間にした。近くには小学校もあり写生大会などでぜひ使ってもらいたいと思っている。
庭園をつくるにあたって豊田さんからアイディアがあり、6月9日から12日までの4日間の「庭づくりワークショップ」を開催、延べ50人程の老若男女が集合し汗を流した。最終日の夕方に設けたバーベキューパーティーが盛り上がったのは言うまでもない。
この現場は車で搬入することができず、高木、低木、まくら木、土などは、下の駐車場からクレーンでつり上げて運ぶなど、それなりに苦労があった。そこで私の母校、東京農業大学造園科の後輩であり、造園業を営む北村巧氏(景松園)に福山市から手伝いをお願いし、スムースに完成することができた。
行政が施工する事業とは違い、善意と善意が組み合わさった、このようなプロジェクトがきっかけで公共的な空間に対して私民が参加する想いが、醸成されたに違いない。尾道で庭づくりを通して記憶に残る時間を過ごさせていただけたことを皆さんにお伝えしたい。
戸田 芳樹

<尾道新聞>2025年6月14日の尾道市が誇る尾道新聞の一面に掲載

小林和作旧居、ほぼ完成の庭園でみんなで万歳を!!

最終日の参加者一同、バーベキューを建物の前庭で

高い石積の前庭園、まだ目土で芝生が見えない

枕木を重ねてつくった植栽地、ポイントに鉄板のプラントボックス

デザインらしいものは、造船の町「尾道」を象徴する鉄板のプラントボックスしかない

枕木はベンチとしても活用したい、樹木がもう少し茂れば落ち着いてくるはずだ









