日本庭園
2026/5/17
旧川上貞奴別邸「萬松園」
5月に金沢の「樹仙堂」主催の庭園見学会に参加した。まず訪ねた「萬松園」は明治・大正時代に演劇の世界で活躍した川上貞奴の別荘。貞奴は川上音二郎と共に欧米に出向き日本の文化を世界に示した立役者である。
昭和8年、貞奴は岐阜県各務原市の木曽川沿いに別荘を建て、現在は国の重要文化財に指定されている。この別荘は5,000㎡の広大な地に和様の建築群や洋館を豪華に配置し、今日では結婚式場としても使われている。
ボランティアの説明員から丁寧な説明を受けたが、建築や装飾のことなどが多く、外部空間の説明は残念ながらなかった。そこで、現地を見ながら私の推察も交えて、思い付いたことを書き記していきたい。
別荘地計画において一番重要なのが場所選びであろう。ここは木曽川に接した台地上にあり、川の背後には山並みがひかえた秀景の地である。この地でのランドスケープ計画は、川からの風や山並みの借景をどのように庭園に引き込むか、それがデザインの重要項目である。
建物は雁行型を取り川との間に芝生の広場を設けている。川に近い建物の窓からは川と山並みを意図的に見せ、広場は植栽を少なくしてボイドの空間としている。ここではデザイン的な仕掛けはしていないが、シンプルな空間は建築とは相性が良いようだ。出来ることなら川沿いの材木をもっと透かし、川の煌めきや山並みのみどりの深さを感じられたら、貞奴が見ていた風景に近づけられるのではないだろうか。
建物の窓や、窓から見せる庭園の意匠は面白く、庭園と建物の関わり合いがガラスを通してつくられていることに注目した。
建物に囲まれた中庭は飛石や延段があり、茶庭の風情を醸し出している。しかし、露地としての機能が感じられず、もう少し建物と庭との相互関係が見えてくれば、深みのある景観になったはずなのに残念。それにしても中庭に数個ある大きな伏石は何を表現しているのだろう。この配石の意味から紐解けば、建物と庭園の物語が出来るのではないかと思えた。
今回の様な建築主体の文化財では庭園の解説を聞く機会は少ない。ボランティアさんが説明できるテキストをつくるのが、造園人の役割ではないか。また深く反省してしまった。

建物玄関部

廊下より芝生広場を見る。背後に山並み

茶の間から庭園を見る

部屋の窓ガラスの意匠

ガラス窓を通して背後の山並みを見る

建物の設え

待合いの周辺

中庭の景観





